「ちょっと一口」からの食欲暴走に関する一考察
♪~♬~♪~♫~(オープニング曲)
【矢瀬田井(以下: 矢)】
みなさんこんにちは。
ダイエッターの生態を解明する『クローズアップ現ダイエット』。
司会の「た(T)べ(B)す(S)ぎテレビ放送」アナウンサー、矢瀬田井 洋(やせたい・よう)です。
「小腹を落ち着かせるため」だったはずの「ちょっと一口」……
皮肉にもその一口が原因で、食欲にスイッチが入ってしまう……
この現象は産業革命以降、人類最大の謎として恐れられてきました〈ウソ〉。
しかし近年、その怪奇現象にはある一定の法則が存在するということが、数々の研究によって明らかにされています。
本日は解説に、食欲暴走メカニズム研究の第一人者、たべすぎ大学しんどい学部教授、アラフィフ不美人先生をお招きしました。
よろしくお願いいたします。
【アラフィフ不美人教授(以下: 不)】
よろしくお願いします。
【矢】
さて、本日はスタジオを飛び出して、一般のご家庭にお邪魔していますが……
おや、どことなくソワソワし始めたのは第1レーンのアラサー不美人選手(32)。
トイレに行きたいのを我慢しているのでしょうか……
はたまた、恋でもしているのでしょうか……もしや流行りの昼顔妻!?
【不】
いえ、おそらくどちらの意味でも真逆です。
排泄でもなければ、トキメキでもない……
……彼女は今、「食欲」という名の魔物と戦っているのです。
冷蔵庫の扉を開閉し始めましたね。
良くない兆候ですよ。
【矢】
うわ!
とうとう台所のあらゆる棚、引き出しを開けたり閉めたり……
これは崩壊への序章なのでしょうか……
イヤ、ここで負けたら終わりです。
不美人がんばれ! 不美人がんばれ!!
あっ、動きがありましたよ。
アラサー不美人選手、どうやら我慢の限界に達し、ダイエットコーラを手に取った模様です。
【不】
これは実に残念ですね……
何度同じ失敗を繰り返せば気が済むのか……
番組冒頭でもアナウンスしていただいた通り、「小腹を落ち着かせるため」と口にした食べ物が食欲スイッチをオンにしてしまう現象は、比較的多くの現代人が経験していることでしょう。
いっそのこと何も食べずにおとなしくしていたほうが、ラクに次の食事を迎えられるというのに……
しかしこれは、すでに1984年6月20日付の英科学誌『ネイ◯ャー』で発表されている非常に有名な事例です〈大ウソ〉。
そして注視すべきはあれから32年経った現在、いまだ直接的な解決策が見出されていないという点……
小腹が空いた際の「ちょっと一口」は長年私たちを悩ませる、いわば「現代人の敵」と呼ばざるをえません。
【矢】
……と、そうこうしているうちに……
アラサー不美人選手、「ちくわ」に手を出したー!!
【不】
何も手を加えずそのまま食べることのできる「ちくわ」「スライスチーズ」「ロースハム」などは冷蔵庫に常備しておかないほうが無難でしょう。
これらはいわゆる要注意食材ですね。
【矢】
一本……もう1本……
……結局丸々一袋いってしまいましたよ……
さらにその視線の先には……
昨夜ご主人が中途半端な量を残し、夫婦喧嘩の火種となった罪深きおでんっっっ……が入った鍋っっっ……
1人分として再度盛り付けるには少なく、かといってそのまま捨ててしまうのも……と、とりあえず保管していたようですが……
昨日ならず今日までも、善良〈……かどうかはご想像におまかせします 〉な主婦を悩ませる……
なんと業の深いおでんなのでしょうか……
さて、アラサー不美人選手はというと……?
【不】
もはや取り皿を出すことすら面倒くさいと見えます。
【矢】
その辺に転がっていた汁椀におでんをよそい……?
コンビニの割り箸を荒々しく真っ二つにするやいなや……?
食べたーーーー!!
食べましたアラサー不美人選手!!
立ち食い状態であっという間に平らげましたーーーー!
……ん……?
なにやら、さらなる嫌な予感がしますよ……
空っぽになったおでんの鍋を恨めしそうに見つめた後……?
なぜか炊飯器を覗き込み……?
炊飯釜に残った一人前弱の白ご飯を確認すると……?
おもむろに「混ぜ込みわかめ〈鮭〉」を注ぎ込んで教科書通りしゃもじで混ぜ混ぜし……?
出来上がった鮭わかめご飯を先ほどおでんをよそった汁椀に移すと……
………食べたーーーー!!!!
またしても食べました、アラサー不美人選手!!!!
やはり立ち食い状態で瞬殺です!!!!
汁椀から口へ……そしてまた汁椀から口へ……
しゃもじが描くその放物線は……栄光への……架け橋だーーーー!!!!
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♫~♪~♫~♬~(エンディング曲)
【矢】
さて、残念ながらそろそろ放送終了のお時間が近づいてまいりました。
延長戦の模様は、ネット配信チャンネル「ダメエット」にてお楽しみください。
アラフィフ不美人教授、本日は誠にありがとうございました。
【不】
ありがとうございました。
【矢】
それではまた来週お会いしましょう。
みなさまごきげんよう。