どうせなら胸から太りたい
はーい、しーずーかーにー!
授業を始めます、教科書の8ページを開いてくださーい!
➊〈顔のサイズが〉「アウト」スラロピテクス
➋腹出すぎじゃわ原人
➌二の腕タルタール人
➍〈太〉モモ・タプエンス
➎待ちに待った胸へ……
顔→腹→腕→脚→胸
人によって太りやすい部位は様々だと思いますが……
私の場合、基本的に上半身から太りはじめるシステム★
そのくせ上半身界のエース「胸」に肉がつくより前に、下半身界のドン「脚」がカットインしてくるスタイル★
ほんまに、一体どういうことやねん。
「デブの貧乳」期間がちょいと長すぎやおまへんか。
あと
「人間、顔から太るなんてありえない。顔が太ったと感じるときは、気づいていないだけですでに身体も一通り太った後である」
……というアンビリーバボーなネット情報はマジですか。
この世に生を得て32年。
私が幾度となく感じた「まず顔が太り、その後身体が太り始めた」ときの「身体」は、すでにデブ化レース2週目に突入していたってことですか。
絶望。
小5風に言うと「てぃらり〜鼻から牛乳〜」
就活風に言うと「お祈り申し上げます」
財前五郎風に言うと「恥じる」「完」
くらいの絶望。
なので、この説は無視させていただくことにして、私なりに個別の解説を始めます。
鏡の前って、たいてい真顔じゃないですか。
自撮りする習慣のないアラサー女が自分の笑顔を目にする機会は、極端に少なく……
大きな鏡の前で美容師さんと談笑するとき、自分の笑顔を久々に見て驚愕。
真顔のときにはそれほど気にならなくても、笑顔になると肉が盛り上がり、信じられないほど顔デカに……
いつのまにか、思った以上に太っていたことを実感します。
動物に例えるとフグ。
食べ物に例えるとたこ焼きにそっくり。
高級食材から庶民の味まで、幅広く取り揃えたなんともグルメな顔面です。
サイゼ◯ヤ──
それは安くて美味しいだけでなく、内装でも我々のイタリア〜ンな気分をより盛り上げてくれる──
それはそれは素敵なファミレス──
で、問題はその店内を彩る美しい裸婦像。
彼女らのふくよかなお腹を見ると、安心して食べ過ぎるわけ。
キュッと締まったウエスト……なんていうここ最近流行り始めたポッと出の価値観よりも、愛の女神アフロディーテが体現した歴史ある美こそ、私たち女性が目指すべき姿ではないのか──〈という謎理論〉
てかあの内装、絶対企業戦略だと思うの。
ミ◯ノ風ドリアのさらなる注文を促すための〈責任転嫁にもほどがある〉。
私もそのテクをパクッて、ふくよかな平安貴族の絵画をたくさん並べた日本料理店とか経営しようかな。
さ◯ぜりやもすなる商売といふものを、私もしてみむとて、するなり
【現代語訳】儲かりまっかー?
私の体型を一言で言い表すなら「顔がデカイ」。
これに尽きます。
しかし、もし二言目を発することが許されるのであれば……
「驚くほどに腕が短い」
まさに、「あらゆる洋服の袖を長くだらしなく見せるための体型」と言えます。
「服を美しく見せるために生まれてきた、天性のモデル体型」が菜々緒なら、「服の袖を長く見せるために生まれてきた、天性のちんちくりん」が私であると言えます。
非常に稀なケースであるとは思いますが、もし「どーーしても服の袖を長く見せるモデルが欲しい! 」そんな折には、私アラサー不美人の所属事務所ス◯ーダストプロモーションまでお気軽にご連絡ください★←ウソ
これほどまでに短さが際立つ私の腕に肉がつき、単なる「短い腕」に「太短い腕」という新たな称号が与えられたとき──
その残念度合いは推して知るべしでございます。
よくダイエット広告とかで「太ももに隙間ができて感激! 」などという煽り文句を読み、「私だって隙間あるしィー〈言うても2ミリくらいだけど〉♪」と調子に乗っていたのですが。
実際には整体師さんが仰天するほどヒドイO脚のせいで、太れど太れど隙間が埋まらなかっただけ……というオチでした。
「30年整体師やってきて初めてお目にかかったくらい、重度のO脚」だと言われました。
で、いざ矯正してO脚が治ってみると、太ももギッチギチやないかーい!!!
脚が閉じんわ。
股擦れするわ。
胸→脚→腕→腹→顔
太りやすい部位の真逆。
見事なまでに真逆。
やっとのことで手に入れた胸の肉は雑魚キャラ的にあっけなく倒される反面、顔肉はラスボス的な様相を呈しつつ頬とアゴに鎮座し続けるという。
顔肉レベルがMAXに達した高校生のころ。
どれだけ痩せても顔だけパンパンなことに悩む私に対して
「ハタチ過ぎたら顔は痩せるから気にしなくていい」と言ったのはどこのどいつだーい?
……うちの母だよっ
ハイ、オカンウソついたー!
「お近くにお越しの際は是非お気軽にお立ち寄りください」っていう引っ越し報告ハガキのテンプレと同じくらい盛大なウソついたーー!!
こちとら成人式からさらに一回り歳を重ねたにもかかわらず、一向に顔痩せする気配が訪れませんが。
しかしこの先、年齢を重ねることによって母の予言どおり顔肉が落ちていくとすれば、一点の懸念事項が──
32年もの間、豊かすぎる顔肉を支えるためパンパンに張り続けた皮膚が今更しぼむと、そのたるみ具合は果たして──?
ああ。
くわばらくわばら。