二重になりたい女の、戦いの記録
はーい!
ふび大現役合格コース、夏期特別講習をはじめまーす!!
例えばお会いしたことのないイラストレーターさんに、SNSアイコンに使用するための似顔絵を依頼するとして。
顔の特徴をつかむため、「あなたは一重まぶたですか? それとも二重?奥二重?」と問われたら、私は自分のまぶたの特徴を明確に答える自信がありません。
なぜなら私のまぶたは、「その日によって違う」から。
奥二重のまぶたを二重にしたくて、無理やりこねくり回したり……
太ったり痩せたり……
浮腫んだりしぼんだり……
そんな愚行を繰り返した結果、極めて不安定なまぶたへと仕上がってしまった次第です。
そう。
それはまるで、私の精神状態のように……〈ちなみに、筆跡が安定しない人は情緒も不安定って話は本当ですか。それなら私、ドンピシャですわ〉。
➊ 重たい奥二重〈パッと見ほぼ一重〉
➋ くぼんだ奥二重
➌ 幅狭めの二重
➍ パッチリ二重
➎ 幅広すぎ二重〈ガチャピン系〉
➏ 三重、四重、五重〈またはそれ以上〉
今思いつくだけでも、ザッと6パターンほど取り揃えております……
パクス・マブータ(ラテン語: Pax Mabuta(パークス・マーブータ))とは、「まぶたの平和」を意味し、まぶた帝国の支配領域(眼球島の北/眉毛海峡の南)内における平和を指す語である。
21世紀の日本の学者アラサー不美人(1984〜)が自らの幼少期を表現した造語。
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一重とか二重とか、そういう概念があることすら知らなかった平和な時代。
しかし幸せは長く続かないのが世の常というもの。
「プチッ……! ハッ……ふびじんちゃんにもらったスニーカーの紐が切れちゃった……」⬅︎死亡フラグ
小学校も高学年に差し掛かったころ。
ある朝、もともと奥二重だった自分の目が、寝過ぎか何かでたまたま幅広二重になっているのを発見し
「あれ!?私、なんかいつもよりちょっと可愛くない!?」
……な〜んて目覚めてしまったのが運の尽き
〈今思えば全日本国民的ブス少女コンテスト 審査員特別賞に選ばれるほどのブス。二重かそうでないかなんて、もはやどうでもいい問題〉
〈⬆︎あえてグランプリの座は他に譲っておく。で、その後グランプリ以上にブサイク道を極めるパターン〉
〈優勝者の「平家◯ちよ」より、落選組の「モー◯ング娘。」の方が売れるパターン〉。
それからというもの、「二重を定着させるための長い長い旅」が始まることとなります。
次章からは、二重の魔力に取り憑かれた1人の少女の闘いの歴史を紐解いていきます。
まぶたの贅肉移動時代(まぶたのぜいにくいどうじだい)とは、西暦1996年から1998年にかけて、ある少女のまぶたの上で起こった贅肉の移住の時代のことである。
これは思春期地域での贅肉量爆発、美意識変動、二重まぶた至上主義の蔓延などが要因とされる。
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まだアイプチ〈二重まぶたを作るための化粧ノリ〉の存在など知る由もなかったこの時代。
ただひたすら、地道なマッサージでまぶたのクセづけを試みる日々。
コレ、まぶたの皮膚を守るためにも、「優しく優しく」が鉄則。
ゆめゆめキツく押さえることのないよう、心がけていたはずなのですが……
日に日に感覚が麻痺して、最終的にはまぶたをグイグイこするのが日課に〈ダメ! ゼッタイ!〉。
東アイプチンド会社(ひがしアイプチンドがいしゃ)とは、思春期におけるアラサー不美人さんの二重まぶた事情に関する貿易独占権を与えられた特許会社。
二重まぶた至上主義下、特に高校時代のアラサー不美人さん偽造二重作成計画に極めて大きな役割を果たした。
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二重まぶたを目指す人、そのほぼ全員が一度は手にすると言っても過言ではない、ド定番のアレ。
伏し目になったときバレバレなのと、うたた寝したとき半目になるのがイヤでした。
アイプチ未使用時の顔は、誰にも見せたくなかったあのころ。
ニセモノ二重がバレるのはいいんですよ。
ただ、使用前の顔を見られるのがイヤなだけ。
修学旅行とか、ヒヤヒヤものです。
みんながまだ寝静まっている早朝、そーっと起きてアイプチ持って、トイレの鏡でコッソリと……ですよ。
しかしまぁ、同じくコッソリ起きてきた同志〈アイプチユーザー〉の多かったこと多かったこと。
また、しばらくアイプチを使用し続けることにより二重が定着する方も多いと聞きます。
ところが、残念ながら私のまぶたはヤワなノリなどいとも簡単に跳ね返す肉厚……いや肉圧……っっ!!
それでもホンモノの二重を夢見て、その後数年間、毎朝アイプチ片手に鏡の前へと直行する日々を続けました。
が、突如まぶたが荒れ始めたため、二重が安定するのを待たず、泣く泣く卒業の運びと相成りました。
爪い誉革命(つめいよかくめい)とは、西暦2004年から2005年にかけてアイプチ朝のフタエマブータ王ノリスティック2世が王位から追放され、ノリスティック2世の娘フビジン2世とその夫でネイル総督クセヅケ3世がフタエマブータ王位に即位したクーデター事件である。
これにより「脱★かぶれ章典」が発布された。
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しかしそのころには幸い〈?〉、爪で目頭を押さえるだけで二重が作れるようになっていた私。
ただこの方法、その日のコンディションに左右される率が高すぎるというか、成功した日と失敗した日の仕上がりの差が激しすぎるというか……
バッチリ幅広二重ができる日もあれば、「コレ、ほぼ奥二重やん」って日もある。
そのため、面接、デート、結婚式等の「勝負日」が近づくと、当日の二重の具合を案じて数日前からヒヤヒヤしたものです。
ちなみに、顔をくしゃくしゃにして笑ったとき等、まれに二重線がまぶたの肉に「ピコン」と弾かれてしまうことがありますが、そんなときは歌舞伎役者もびっくりの見得切りで二重を復活させると吉です。
ヒヤヒヤからの独立戦争(ヒヤヒヤからのどくりつせんそう)は、西暦2008年〜2010年までに起こった、ツメデクセヅケ王国とマイボツ王国東部沿岸のセッカイ領との戦争である。
2年間にも及ぶ激しい戦闘の末、ツメデクセヅケ王国が勝利をおさめた。
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アイプチ修学旅行といい、爪でクセづけ結婚式といい……
まぶたの調子にヒヤヒヤさせられっぱなし人生に嫌気がさして、もういっそ整形してしまおうか……と考えた時期。
整形が悪いこととは、みじんも思いません。
ただ、失敗の可能性を恐れて手が出なかったビビリ屋の私でございます。
しかしさ、なんか最近、二重の日本人多すぎません?
……とかなんとか、三流評論家みたいなことをほざくこの私も、まぶたをいじくりまくった日本人のうちの1人なんですけど。
むしろその代表格と言っても過言ではないんですけど。
でもこのアジア地域における二重人口の急激な上昇って、相当多くの東アジア人が、何かしらの方法で二重化を試みている証しみたいなものじゃないですか。
こすりまくって、たるんだり。
アイプチしすぎて、かぶれたり。
多少のリスクを負ってでも、手に入れたいのが二重の魔力。
あなおそろしや、おそろしや……
不安スッ…革命(ふあんスッ…かくめい)は、21世紀にフタエマブータ王国(シュウケイキョウフ朝)で起きた美容革命。
不美人史上の代表的な美容革命で、前近代的な「二重まぶた至上主義体制」を変革して「ありのままの姿見せるのよ社会」を樹立した革命のことを指す。
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「つけまつげを装着すれば、その間だけは二重になる」
「痩せたら / 思春期を過ぎたら、いつの間にか二重になっていた」
……世の中には、そんなステキまぶたをお持ちの方々もいらっしゃるようですが、残念ながら私のまぶたはそうでなかったようで。
また、30代も間近に迫り、責任ある仕事を任され始めるお年頃。
年々生活が慌ただしくなるのに反比例して、マツエクサロンからも足が遠のき、アイメイクは簡略化され、太ってまぶたは厚みを増しました。
気づいたころには目の大きさが、20代前半のころの半分に……
大げさじゃなく、本気で半分に。
正真正銘、ハーフ&ハーフに。
「女は目の大きさを自由自在に変えられるらしい」というあの都市伝説、あながちウソじゃなかったんだなぁ……と、身をもって体感した次第です。
それに伴い二重まぶたへの執着が薄れ、気づけば二重になるためのアプローチを、綺麗さっぱり手放していました……
子どものころって、「目が大きい=可愛い」と思いがちじゃないですか。
校内で目立つ子、可愛い子は、だいたい二重のパッチリ目だし〈まぁ「絶対」とは言い切れませんけど〉。
「二重こそが美人の条件!」
……少なくとも私はそう思っていました。
でも、そんな私も大人になり、ついに気づいてしまったのです。
一重か二重か、目が大きいか小さいかなんて、実は大した問題ではないということに。
世の中には「一重美人」と呼ばれる人が一定数存在し、「その方々は多くの場合、顔の輪郭もしくは骨格が美しい」ということに。
手前味噌ではありますが、ウチの夫がまさにその典型でして。
夫は地味な容姿で、かつイケメンとは言いがたく、かつ目立ったチャームポイントもなく、かつ存在に華もありません〈身内とはいえヒドイ言い草〉。
そのせいか、本人も自分の容姿に自信がないようで。
妻〈私〉のまぶたが単に「一重ではない」というその一点だけを根拠に、自分より妻の方が美形だと思い込んでいます。
でも実はそうじゃない。
そうじゃないんだなぁ。
夫は確かに完膚なきまでに一重です。
しかし、小ぶりな頭蓋骨、丸みを帯びた後頭部、細い鼻筋、適度に突き出すアゴ、それに伴い引っ込んだ口元…
そんな恵まれた骨格を持ったアナタのことが、実は死ぬほど羨ましいだなんて……
……悔しいから一生、教えてあげないんだからっっ!
巨大な頭蓋骨、ペッチャンコの後頭部、たくましい鼻筋、過度に引っ込んだアゴ、それに伴い突き出た口元……それでも毎日を一生懸命生きている。……生きざるをえない妻より、愛を込めて〈泣〉
……とまぁ、中途半端な惚気で終わるのはこのブログらしくないので、最後に定番の自虐を一発ぶちかましときますね。
ハイチース……モンスター〈集合写真を撮影する際、周りの人々より小顔に写るべく「ハイ、チーズ」の瞬間自分だけ一歩後ろに下がる恐ろしい妖怪。戦闘力53万〉が頻繁に出現する昨今。
この忌まわしき時代の流れに反し、我が妹〈超小顔〉&夫〈激小顔〉は、私〈鬼大顔〉と写真を撮る際、にわかには信じられない行動を示す!!
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彼らこそ、「ハイチース……モンスター」とは真逆の性質を持つ、心優しき「ハイチーズイッエンジェル」である……
あまりにもデカイ顔を持つ姉兼妻を気遣い、支え、引き立て、サポートする素晴らしい脇役精神。
これこそまさに……
ブスゾン不美人with B〈美〉骨格義兄妹!!
……二重に一切関係ないオチで、すみませんでした。